ポジティブサイコロジーコーチングの成り立ち

ポジティブサイコロジーとは1998年に当時、米国心理学会会長であったマーティン・セリグマン博士(ペンシルベニア大学)の提唱によって設立された新しい心理学の学問です。従来の心理学はうつや悲しみ等、人間のマイナス面をどのように治療するかに重点が置かれていましたが、近年の研究で人間のマイナス面の治療とプラス面の増進は異なるプロセスであることが明らかになり、ウェルビーングや強み等、人間のポジティブな側面の研究の重要性が唱えられました。以後、ポジティブサイコロジーは欧米圏を中心に瞬く間に広がり、ハーバード大学では受講学生数が最も多い授業となり、欧米圏では非常に注目を集める学問領域に成長しました。一方、研究を通して、幸福感や感謝、希望、勇気、強み、情熱、モチベーション等、様々な人間のプラス面の知見が構築されるなか、これらの研究成果をどのように実社会に役立てていくのかということが議論の的となったのです。そこで注目されたのがコーチングでした。2007年にセリグマン博士が「コーチングとポジティブサイコロジー」という論文を発表したのを契機に、ロバート・ビスワス=ディーナー博士がポジティブサイコロジーコーチング(PPC)に関する著書を出版し、PPCの第一人者と呼ばれる存在となりました。また、ハーバード大学心理学部教授のタル・ベンシャハ―博士やVIA Character Instituteのライアン・二―ミック博士、コーチング心理学のスージー・グリーン博士など、第一線で活躍するポジティブサイコロジーの研究者らもポジティブサイコロジーの知見に基づくコーチングを推進しています。

参考文献

科学的な知見に基づくコーチング

昨今、教育、能力開発、子育てにおいて、対話や1 on 1のコーチングの重要性が注目されています。コーチングにもアドラー心理学やNLP等、様々な理論はありますが、科学的な手法で裏付けされたものはほとんどありません。一方、ポジティブサイコロジーは科学的にデータを収集し、解析して導き出された理論です。実際に人間のプラス面を研究した知見を基にしたコーチング手法であるため、クライアントにポジティブサイコロジーの知見も共有しながら進めていく教育型のコーチングになります。科学に裏付けされた理論に基づくため、コーチが明確な指針と根拠をもって質問をするのも特徴的です。PPCを学ぶことで、人はどのような条件が揃った時に希望が湧くのか、勇気が出るのか、モチベーションが高まるのか等、科学的な知見に基づく形で人を育成することができるようになります。

次世代型の育成アプローチ

これまでの教育現場における指導法や企業における能力開発は、人の欠点を直し、矯正していくことが主流でした。日本経済が右肩上がりで大量生産が「正解」とされた時代では、交換可能な平均レベルの人材を育成すればよかったのですが、グローバル化やIT技術の発展に伴い、多様な価値観が入り乱れる今日において、唯一の「正解」は存在せず、これまでの「常識」だけに頼った子育てや生徒指導、部下の育成は時代にそぐわないものになってきました。このような不確かな時代において、若者の「生きる力」を育み、彼らが最大限のパフォーマンスを発揮するためには、その人がもつ長所や強みに投資していくことが重要だということが明らかになってきました。取柄のない平均的な人になるよりも、濃淡があり、淡いところは補完し合い、濃いところで価値を生み出せる人が必要とされる時代になってきたのです。この時代の流れを受け、「長所を褒めて伸ばすこと」や「才能を見つけ磨くこと」が重要であることはすでに言われ始めていますが、具体的に「どうやって?」がわからず、当惑されている方も多いのではないでしょうか。PPCはその「どうやって?」にお応えします。ポジティブサイコロジーの知見を活かしたコーチング・スキルは、これからの時代の流れに沿う育成スキルであり、具体的には以下のようなシーン等で実用的に役立ちます。

教育現場

  • ・周りの生徒と比較して、いつも自信がない生徒に声がけする時
  • ・ちょっとした失敗で諦めてしまう生徒を励ましても響いていない時
  • ・クラスメイトの人間関係に悩む生徒に対応する時
  • ・不登校になった生徒への対応の仕方がわからない時
  • ・将来の進路に悩む生徒に助言しなければいけない時 等

企業の人材育成

  • ・部下が指示待ちで自発的に動かない時
  • ・部下の欠点修正ばかりに時間を費やしてしまい、あまり成長していない時
  • ・チーム会議でチームビルディングをしたいがネタがない時
  • ・部下のエンゲージメントの高め方がわからない時
  • ・部下に対して、ネガティブな評価を伝えることができない時 等

子育て

  • ・子どもがすぐにネガティブに考えて諦めてしまう時
  • ・自己肯定感が低くてチャレンジしない子どもへ声がけしても変化がない時
  • ・自分の子育てが甘やかしなのではないかと不安に思う時
  • ・子どもが好きなことばかりして、やるべきことを避けている時 等